不動産売却の期間

 不動産売却の手続期間は、通常数か月ほどかかります。

 どんなに早く買い手が見つかっても、売り出しから1か月以内に売買が完了することは、まずありません。

 不動産は、数百万円から数千万円という大きなお金が動くために、手続は慎重に運ぶ必要があること、そして、不動産売却のために、諸々の事務も発生し、そこにも費用が生じることもあって、最低でも3か月くらいは見ておくことが必要でしょう。

不動産売買契約書

不動産売却の流れ

 以下は別ページにも記載した内容ですが、一般的な不動産の売却の流れです。

被相続人の死亡~相続登記

不動産を売却するためには、まず被相続人名義の不動産を相続人名義に変更しなければなりません。被相続人名義のまま売却することはできません。相続人名義に変更するために、相続人全員で遺産分割協議を行い、不動産の相続先を決める必要があります。

不動産売買契約の締結

相続登記または遺産分割協議完了後、売主との間で売買契約を締結します。通常、手付金として、50万円~100万円程度を受領します。この時点では、あくまでも契約書を締結しただけで、不動産の所有権はまだ売主にあります。

測量および建物解体(任意)

売買契約締結後、売主の負担で、土地の測量および建物解体(土地のみの売買の場合)を行うことが一般的です。但し、買主側との交渉で、測量および解体を、買主負担とすることも可能です(現状有姿での引き渡し)。

売買代金全額の受領/決済

売買代金全額の受領および不動産の引渡手続のことを「決済」いいます。決済は、通常、買主が融資を受ける金融機関の応接室などで行われます。買主は売買代金を支払い、売主は所有権移転登記に必要な書類一式を引き渡します(同時履行)。

 

①相続登記

 相続で不動産を取得された場合、最初に行うべきことは、相続登記となります。被相続人から名義を変更することなく、直接買主に対し不動産を売却することはできません。

 一旦、相続人名義に登記を変更し、そのうえで、相続人が売主として、買主との間で不動産売買契約を締結します。

 相続登記の期間は、相続税が発生するような事案であれば、相続税を検討しつつ遺産分割協議等を行うこととなりますので、最低でも3ヶ月ほどはかかるかと思われます。

相続登記の期間は事案により大きく変わります。

相続税が発生せず、かつ、相続人間の協議がまとまっているのであれば、ご依頼から最短2週間程度で、登記まで完了することが可能です。

一方、相続税が発生するような事案や、相続人間の協議に時間を要する場合には、完了までの期間は長くなります。

 

 

②不動産売買契約の締結

 不動産売買契約の締結は、売主及び買主側の不動産会社で、契約書案を作成し、それを精査し内容を確定したうえで、売主及び買主が署名押印をしていきます。遠方の場合は、売買契約書を郵送することが一般的です。

 不動産売買契約書は、宅建協会などの定型の書式が利用されることが多いのですが、各事案により特約条項が異なります。また、不動産会社には、契約締結に際し、法定の重要事項説明を行う必要もあります。こうした契約書等の作成には1か月程度はかかるかと思います。

 なお、各不動産会社にもよりますが、事務手続遂行のスピードが遅い会社であれば、相続登記をしてから初めてこうした書類作成にとりかかるため、より時間がかかってしまう傾向があります。そのため、当初の相続の段階から売買関係の事務も並行して進めることで、迅速な売却につなげることが可能となります。

 

売買契約書の締結期間

通常、売買契約書等の書類を確定するまでに1ヶ月ほどは必要となります。

くわはら不動産では、当初の相続段階から、状況を見て、こうした売買関係の事務を並行して進めることで、契約書締結までの期間短縮につなげています。

③測量及び建物解体

 不動産を売る際には、面積や境界を確定することが一般的です。

 面積や境界を確定せずに、登記上の記録にしたがって売買することもありますが、不動産売却に際しては、測量などが必要になると覚えておく方がよいでしょう。

 また、買主が新たにマイホーム等を建築するために土地を購入する場合に、もし土地上に既存の建物があれば、その建物を解体する必要も生じます。これも、測量等と同様に、建物付きで売買することもありますが、やはり一般的には、売主側で解体することとなると把握されておくべきでしょう。

 

誰が測量、解体などを行うべきか

売買契約は交渉ですので、売主、買主どちらが行うかは、結局のところ協議のうえで決定されます。

しかし、一般的には、売主側で行うことが慣例です。仮に売主が行わず、買主の費用負担で行うこととなった場合には、その分の費用が売買代金から減額されることでしょう。そのため、いずれにしても、測量費や解体費は、売主の負担となることが多いのが実情です。

 測量等の必要期間は、境界確定に大きく左右されます。境界確定のためには、隣地の方に境界の確認書へ署名押印をしてもらう必要がありますが、協力的な方でなかったり、あるいは、何等かの問題があれば、境界確定までの時間が長くなります。

 解体も、実際の作業は数日でしょうが、工期を組んだり、作業する車を手配したり、また解体業者の予定なども鑑みると、1ヶ月以上は必要になるかと思われます。

④売買代金全額の受領(決済手続)

 売買契約書も締結し、測量、解体なども完了すると、いよいよ売買代金の支払・受領手続へと至ります。

 こうした手続のことを決済手続といいます。不動産の売買代金の支払だけではなく、それに付随する費用、例えば測量費、解体費、不動産仲介手数料など全ての費用の支払いを行うという意味で決済手続と呼ばれています。

 決済手続は、買主が融資を受ける金融機関の応接室などで行われます。そこには、買主、売主、不動産仲介業者、登記を担当する司法書士が集まり、手続を進めていきます。時間は1時間弱程度となります。

 買主は、不動産の所在地の近くにお住まいの方になる傾向があり、例えば東京の不動産であれば、東京の方が購入し、決済を行う金融機関も東京のどこかの金融機関支店となります。

 

決済に出席する必要性

融資が発生する場合、買主は必ず金融機関に行く必要があります。

一方売主も、登記を担当する司法書士が本人確認する必要性もあり、決済に出席することが一般的です。決済は、平日に行われるために、仕事を休む必要があるかもしれません。また、遠方の場合は、そこまで赴く手間も生じます。

くわはら不動産は、司法書士を兼業しているため、こうした決済の出席も売主に代わり代行できることが大きな強みであり、手続の利便性向上に貢献しています。

まとめ

 相続から売却までの期間をまとめると以下のとおりです。

手続最短通常
相続登記ご依頼から2週間で登記完了1か月~半年以上(相続税が発生する。相続人の協議がまとまらないなど)
売買契約書の締結相続登記から1週間(相続手続時から準備することで可能となります)相続登記から1か月程度
測量、解体、農地許可など契約書締結から1ヶ月(土地家屋調査士、解体業者次第)契約書締結から2ヶ月以上(土地家屋調査士、解体業者の予定次第。農地の許可が費用な場合)
売買代金受領(決済手続)測量等完了から1週間~2週間測量等完了から1週間~2週間

 上記が不動産売買手続にかかる期間ですが、ここに買主が付くまでの期間が加わります。不動産売却の営業を開始してから、すぐに買主が出現する場合もあれば、買主が現れるまで数か月あるいは1年位以上要する場合もあるでしょう。

 買主がいつ出現するかは、誰にも分かりませんが、それ以外の手続については、必要な期間を把握することが、全体をとおしての負担軽減にもつながります。